REIとANLY 二人の緊張感の意味する先

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1.はじめに

   僕は福岡で2人のそれぞれのワンマンライブを観た。率直に言って驚いた。こんな若い子たちがこんなに既成概念から外れた音楽に真剣に取り組んでいる様が驚きだったし、それに輪をかけて、その演奏方法等の確かさが現代的で切り口鮮やかで感嘆した。この二人の音楽を初めて聴いた時に僕は共感する要素を一切持ち合わせていないんじゃないか?って思っていたわけで、じゃあなんで観に行くことになったのかといえば、神の悪戯か天命としか思えなかった。  

   たまたま僕のHR/HMを語り合う仲間達がREIに嵌ってCDを買ったとSNS上で話題にしていて、「なにが良いの?」ってちょっかいを出したのが事の発端で、その際にYouTubeで観たMVの中で印象に残ったのが「Black Banana」だった。でもMVはMV。「MVが面白くてもライブがよくなきゃどうしようもない。観てみないと本当のところはわからないだろうね〜。」ということで、とりあえず、ライブを観てみようかとなって、いつのまにかチケットを買うことになった。多分そこでチケットではなく、CDを買っていたら「なかなかファンキーなねーちゃんだったな〜」くらいで終わっていたんじゃないかな。いやー、神の悪戯としか思えない。

 

   一方のAnlyに関してもほとんど変わらない。REI のライブでも一緒だったNECOさんがREIに嵌って、色々気になる映像を紹介してくれるものだから、ちょっとライブでも観ておこうかと言うことになった。いささか軽いノリで今回はライブ参加を決めたが、結果オーライ!そのおかげで新しい世界を垣間見ることができたんだから。音楽ってHR/HMに特化して聴くのも良いけれど、頭でっかちにならず、肩の力を抜いて幅を持って聴いてみるのもまた違った世界が見えて楽しい。そんなど素人からみた二人の世界が以下のレポートです。

 

2.REIのライブ!

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REI OF LIGHT 2019

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Rei Release Tour 2019 “Rei of Light” 

2019年2月17日 福岡BEAT STATION

 

   チケットを買ったのは福岡BEAT STATIONで行われる2月17日のREIの公演だった。話題にしていたのが昨年の10月だったので4ヶ月も前の話だ。その頃にThe Rolling StonesBBCセッション集「オン・エア」の発売に合わせて10人のミュージシャンによる“オン・エア”リストが発表されたのだけれど、その選ばれた10人の中にいたのがこのREIだった。他のミュージシャンは往年のミュージシャンばかりで、まあそうだろうなと頷けるアーティストばかりだったが、REIは全く知らなかったので正直もの凄く違和感が残った。ただそのリストでREIが選んだ10曲があまりにも初期ストーンズのナンバーでありながら良い曲だったので上がる。「恋をしようよ」「彼女は虹さ」「悲しみのアンジー」等女性が歌ってもカッコいいセレクションだったように記憶している。そういえば、NECOさんがタイムラインに上げていたREIのラジオを聴いたんだけれど、その時に紹介していたのが1920年代のアメリカンロックだったりして、それはもうかなり渋いロックで、100年の時をものともしない知識の広さに圧倒された。一体この娘はどうなっているんだろうって不思議に思った。

 

とにかくMVを聴いてもらえばわかるんだけれど、歌声はあのビジュアルからは到底想像できないような大人びた美声であり、爽やかなイメージとは真逆な本格的なアメリカンミュージックを基調とした、偶にコケティッシュな現代的な音楽を取り混ぜた不思議な楽曲をどれも真剣に作っている。まるで往年のミュージシャンが自分のルーツに立ち戻って作ったかのような曲もあれば、可愛らしい曲もあり、ぶっ飛ぶ。一重にREI流の音楽なんだろうな。一体、なんでこんなリバイバリズムな古典ロックをやろうと思ったのか不思議で、その不思議さをライブで確かめてみようというのがここにきた目的だった。

 

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   入場待ちの列には他では観たこともないような、全身ストーンズな、いかついオヤジらが並ぶ。絶対やばいかもしれないと不安が過ぎる。ライブが完全なストーンズだったら耐えきれずに帰っちゃうかもしれないなぁなどと、弱気を見せながらの入場。チケ番はあまり良くなかったからあまり期待していなかったけれど、とっくに入っていたNECOさんたちの位置まで、余裕で行けた。入場するなりみんな物販に並んだり、ドリンク交換をしたりで手間取って、そんな事にお構いなしの僕はチケ番に関係なく前に行けた。NECOさんの手招きのおかげで極めて観やすい上手につけたのも良かった。ここにはREI専用のお立ち台があって、見る側からしたら絶好の場所なんだって教えてくれた。なるほど見れば不思議とそこにしかお立ち台はない。おかげでライブではかなり近くでREIを見ることができた。

 

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    暗転したステージにバンドメンバーが配置につき、REIも出てくる。衣装はメンバー全員がストライプを基調にしたものを着用していてスタイリッシュな統一感を出している。みんなREIを見て、ものすごい緊張感の中で演奏をしている。REIのテンパリ具合が僕らにもじわじわ伝わってくる。やってる音楽は非常にクラッシックなナンバーだけれど、どれも技ありな細工があって一筋縄ではいかない。可愛らしいビジュアルと古めかしい音楽がどう噛み合うのか?楽器に押しつぶされそうな華奢な体つきなのに、楽器を道具として完全に支配している。そして意外にも楽曲のバラエティー、豊かさ。ギターがストラトからリッケンバッカーアコースティックギターからのフライングV、そして再びストラトからの締めのファイヤーバード。ストラトは色鮮やかで綺麗だったけれど、アコギやファイヤーバードの使い込み感、ビンテージ感が半端ない。かなりボロボロですごい。イメージではとてもフォトジェニックなREI。ビジュアルにこだわるおしゃれな感じがCDやネット上の写真から感じられるのだけれど、実際、ライブで見るREIはもっと違うイメージが感じられる。確かにバンドで衣装を合わせたり、ギターに晴れやかな配色を選ぶあたりのセンスはおしゃれなんだけれど、そのほかの機材は木調な薄汚れたものが多く、とてもイメージとは違う。そもそも演奏する演目でも甘えた曲があれば、トンがった曲がある。この雑多な曲を生演奏するのは至難の技なんだろう。当然コンポーザーとして演奏時には自分のギターだけではなく、バンド全体を睨みながら進めているから、余計に曲間の調整時に凄い緊張が走る。そんな張り詰めた空気を癒すかのように入れてくるMCや各種サプライズ。チロリアンのバラマキサービスだったりニワカセンペイのニワカ面をバンド全員がつけてのアンコール曲演奏だったりとそんな茶目っ気がある。物凄い集中力で一曲一曲を丹念に演奏していく生真面目なところだって、最高のものを僕らに届けようとするサービスなんだからそればかり気にしてはいけない。時にスライ&ファミリーストーンになったり、ザ・ナックになったりと、オマージュっぽいナンバーが飛び出してくる。そうかと思えば「Arabic Yamato」のような癒しのナンバーが飛び出すしてきて、そのギャップにやられる。中では一番ハードロックに近い「BZ BZ」なんかが意外で面白い。弾き方もロックっぽい早弾きだったりしてなんのオマージュなんだろうか。このバラエティに富んだ、でも他できいたことが無いような懐かしのナンバーたち、通常僕が見ているどんなバンドの演奏とも似てない。どちらかといえばジャズやビッグバンドに近いのかもしれないが、アプローチの仕方がちがうから不思議な感じは消えることはない。そんな乗りであり、アドリブで常に演奏者同士で対決しているかの様なインプロビゼーションのあり方に緊張が抜けない。そして僕がすごく面白く感じたのはギターとその音色の違いを楽曲毎に違いを明確にしているところ。通常僕らはヘビーな音楽を聴いているから、それほど単体の楽器の持つ音色、特徴などには無頓着だったりするのだが、歪み具合などが少ない、綺麗な音色やサスティーンにこだわった曲が多いREIの曲には、それぞれの曲毎に使う機材を割り当てている。へー、こんなにも違うのか!ってことが観ているだけでわかる、驚いた。トータルで一番整っていた模範的な音色のストラト、荒ぶる音色のリンケンバッカー、激しい曲に最適なフライングV、そして何故かREIに一番似合っていたのがファイアバードだったと感じた。それぞれ音色が違うのが面白くて見入った。ライブを観るまでに曲はMVの数曲しか聴いていないから、まともに知っているのが「BLACK BANANA」「MY NAME IS REI」くらいだったのに楽しめた。このライブは新作「REI」のリリースツアーREI OF LIGHTだったが、そのアルバムと、ライブの雰囲気はずいぶん違う。ライブのあの緊張感はどうしたって録音できない。そんなREIの歌がこの時代に受け入れられているのであれば、まだまだ日本のPOPシーンも大丈夫なきがする。

 

3.Anlyのライブ!

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LOOP AROUND THE WORLD TRACK 2

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Anly “Loop Around the World” ~Track 2~

2017年5月2日 福岡INSA

 

初めは熊本のHAPPYJACKに出るということでそこでAnlyを観る予定だったのだが、サーキットとホールでライブがわかれた為、ホールで観ていた僕はAnlyのサーキット側には回れず、止む無く諦めることになった。そこで福岡INSAで行われるワンマンライブに参加することにした。5月2日はGWの中日ということで、予定がなかなか立たない中で、なんとか空けて、行くことができた。天気も良く街はどんたくの準備で浮かれている、そんな雰囲気の中で行われたこの福岡公演は香港公演と台北公演の狭間に行われた。日本ツアーとしては初日。ライブ前にANLYに関する情報はREI同様いくつかのMVでしかみていなかったから、全くもって初見に等しく、ライブ後の感想も、知るものからは呆れるほどに当たり前な内容だったようだ。そもそも僕はPOPを聴いていないに等しく、近年のPOP事情なんてのも全く知らない。エド・シーランについてもまるで知らなかった。日本のフェスにも来ていることや、レコード店でもよく見かけると言うくらいは知ってはいたが、何をやって有名になったのかなんてことは知らなかった。だからANLYがloopと言ってやっていることが最初は全く理解できていなかった。

 

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ステージでアンリーは初めにちょこっとギターを弾いて、あとは弾いてなかったりする、バックでは録音された音楽が鳴っている。一体なんのこっちゃ?

まさかライブを録音で歌うのか?初めは怪訝な目でその録音疑惑を検証するという見方だったのだが、途中で気づく。これはその場で音入れをして仕込んでいるのではないか?1フレーズ、2フレーズ

、リフ、ドラム、コーラス1、コーラス2・・その仕込みをバックに歌っているんじゃないのか?

 

気づけば一曲毎に音入れをして歌を作っているようなもんだ。もう、これはマジックのようだった。ライブではその説明はなかったが、帰宅後に見たYoutubeではしっかりその辺をANLY自身が語っていた。エド・シーランがやっていたループペダルと言うやり方を採用してANLYの曲は作られている。ライブを見るまでは単なるギターを持って歌うシンガーソングライターとしか想像できてはいなくて、須らくボヘミアンラプソティーのMVのイメージで捉えていた。だからびっくりである。当然のことながら、周辺の友人らは5年も前にループペダルについては知っていた。結構みんなやってるよね!とか教えてくれたりする。、今頃だろうが、滑稽だろうが、そんなの関係ないくらい本当に驚いた(笑)本当にそれに気づいた時は鳥肌がたった。あとでエド・シーランのMVを見て、なるほどと思いはしたものの、僕の見たANLYのライブでのパフォーマンスはその先を行っていたし、同じくAnlyのLoop track1の映像をみたけれどMVじゃあ捉えきれない音の繋がり、重なりが、ライブでは圧倒的に耳に飛び込んでくる。録音が単なる録音ではなく仮想的なリアリティーを持った音塊として幾重にも折り重なってループする。、たった一人のステージがあたかもビッグバンドのステージのごとくに何人ものAnlyで演奏される。これが一人が作る音なのか!本当に圧巻だった。仕込みをしている時のANLYはプレイヤーであり。コンポーザーだ。あの緊張感はどっかで見たなと思ったらREIだった。同じ楽器、ギターを持っていることから括られやすい二人だが、やってることはずいぶん違う。それでもREIは優秀なバンドマンと共に新しい方向から歌を再構築しているし、Anlyはループペダルと言う道具で歌を再構築している。二人とも見た目からは想像ができないくらいのパワーを音楽に投じてそれぞれの音楽を生み出している。僕にとっては全く未知の分野ではあるが、この迫力、凄さはわかる。今の音楽を感じたければ迷わずこの二人のライブに行くべきだと伝えたい。

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4.終わりに

今、ロックや音楽全般に集客が見込めない難しい時代を迎えている。そこで若手がどんどん海外にツアーで出かけている。今回、Anlyは香港からはじめて、福岡、台北と混ぜてツアーをしている。この感覚はなかなか国内だけでやっているアーティストにわわからないけれど、その経験は必ず大きな収穫となって行くはずだ。福岡のインディース、ラウドロックバンドであるPALEDUSKも現在アジアツアーを敢行している。時代は確実に変わってきている。日本も世界を市場にして闘う時が来たんだと思う。ふと思えば、REIもAnlyも、何のためらいもなく、海外ツアーをするだろう。音楽は言語に関係なく闘える。非英語圏と言えども可能だということはもう既に示されてきた。ラムシュタインはドイツ語で世界に挑み、Babymetalは日本語で世界に挑み、共に受け入れられた。時代は変わった。新しい才能が思う存分才能を発揮できる場所はインターネットを使えば割と誰にでも簡単に広げることができる可能性を持つ。この二人の才能に巡り合って、そのことを更に強く感じた。僕の感じた驚きはきっと全世界共通の驚きだと思うので、どんどん進出して活躍を期待したい。萎縮せずにどんどん攻めて勝ち抜いて欲しい。