難解至極なダークサイドの2バンドSABATON & BABYMETAL

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BABYMETAL WORLD TOUR 2018 in JAPAN

20181031

神戸ワールド記念ホール

ゲスト SABATON

 

1.現地入り

九州とは言え朝はかなり冷え込む。この冬になろうかと言う季節に台風発生のニュースが流れる。よほどSU-METALは台風に好かれているのか?と半ば呆れつつも、多少の緊張感が生まれ良い旅となった。三ノ宮から乗ったポートアイランド線の中で福岡メイトのYUUくんに遭遇した。YUUくんは昨日の公演から参加していて神戸ワールド記念ホール周辺の事情に熟知しており、暫く道先案内人として帯同してもらうことになった。駅の階段を降りると岡山メイトの桃太郎さんをみつけて挨拶を交わした。楽園やSNSの仲間に会えることがライブの一つの楽しみでもある。BABYMETALのライブは僕にとっては普段ネットで交流する人たちとのオフ会の場としての意味合いが強く、単なるライブ参戦ではない。今回、SHINGOさんにも会って、色々お話を聞けた。SHINGOさんとはガンズの京セラドームや大阪銀ギツネ祭等で何度かお会いしたが、直接話したのは今回が初めて。こうした現地での繋がりが次のライブ参戦への活力になるのだと改めて感じた。

 

YUU「この右側が市民広場でクロークが設営されている。メイトの溜まり場にもなっています。開場前になるとピットの入場列の整列場所にもなります。そして左がワールド記念ホール。あの丸いのがそう。物販もホール前に設営されていて、超ピットの入場列の整列場所になっている。TMさんは超ピットだからクロークに預けたら入場列まで少し歩かないといけない。まあ、近いですけれどね。あと、サバトンの物販は手前で奥がベビーメタルですね。」

 

案内に従って、物販列のところまで行き、11時前で閑散としている状況を見てから、僕らは市民広場に行った。市民広場のピラミッドの下には多くの顔なじみがいた。ライブ当日は全国からメイトが集まって来る。この交流が堪らないからまた、次も此処に戻ってくる。僕はさっきYUUくんが気にしてくれたようにA221番、超ピットで、L1だった。ステージから一番近い場所だった。後日気づいたのだが、僕は間違ってR1に入ってしまったようだった。おかげで上手のMOAMETALの前にいることができた。不幸中の幸いか?僕の位置はドセン45列目。距離的には申し分ない距離だ。ステージは変則的に張り出しているので柵も変則的に前と横にある。圧縮もほぼなかったから、常に見やすくて最高のポジションだった。

 

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2.開演

We are SABATON!」の掛け声と共にサバトンのライブが始まる。

左からトミー、パル、ハネス、ヨアキム、クリスと並ぶ。これだけ大男達がブロンドの長髪を振ってヘッドバンギングする様は圧巻だ。2018年のワールドツアーはほぼ同じセットリストで演奏されているようで、一曲目はいつもGhost Division(幽霊師団)だ。幽霊師団とはナチスドイツのロンメルの戦車団のことで、この戦車団は高速で走るパンツァーを使った奇襲を得意としており、その形容として幽霊師団と呼ばれている。ロンメルは下層階級から元帥にまで上り詰めた英雄。そんな英雄も綺麗事で勝ち上がって来たわけではないことを歌詞に込める。歌詞の重苦しい内容とは裏腹に、サバトンのライブは楽しい。リアルな迷彩服や防弾チョッキで身を包み込んでいるにも関わらず、オーバーな振り付けがコミカルに映り、何故か笑いを誘発する。戦争なんてしないで楽しく行こうぜと言うのがたぶん、この人達の訴えたいところなんだろう。

 

二曲目、Winged Hussersは羽の軽騎兵と言う第二次ウィーン包囲時の救世主ポーランド軍を英雄として歌う、ここでヨアキムが若きギターの魔術師トミー・ヨハンソンに「ちょっとサバトンとは違った感じのギターを聴いてみたい!」リクエストするのでトミーは早弾きのソロを披露する。*注1もともとトミーはREINXEEDというバンドでメロディックパワーメタルを奏でていた。三年前にサバトンに参加してサイドギターをやってはいるがガスGを彷彿させる超絶なテクニシャンだ。サイドギタリストの彼にこんなMC中に見せ場を作ってくれているのは素晴らしい。またヨアキムとのコミカルなコント風掛け合いが僕らメイトには壺に入っている。「違う曲を!」と言うリクエストにトミーは次にバンドで演奏する「Swedish Pagansを得意げに演奏する。頭を抱えてヨアキムが決め台詞「バカ!」が流暢な日本語で滑り出て会場全体が爆笑した。休憩していたメンバーがもどりSwedish Pagansが始まる。この曲はヴァイキング北欧神話を題材にしている。*注2続く

The Last Standは神聖ローマ帝国によるローマ略奪、Carolus Rexはスウェーデン国王カール12世の王位継承を歌い、Night Witchesではロシアの女性爆撃連隊のことを歌う。どの曲も激動する歴史上のメルクマールとなる題材を扱う。僕らはヨアキムのお願いでジャンプをする。逐一深いお辞儀で感謝を表すヨアキムは完全に観客の心を掴んでいた。

 

そして7曲目、Primo Victoriaである。曲自体は耳なじみの良いメロディックな旋律なのだが、スクリーンに映し出される爆撃機に違和感を感じた。曲はノルマンディー上陸作戦を扱っているためB17爆撃機が映し出される。あたかも青空がその黒き機体に埋め尽くされたかのような演出に日本人はB29爆撃機を想起する。高所に設置されたスクリーンがリアリティを加速化させた。BABYMETALは広島生まれのSU-METALを擁している。あの原爆の日に黙祷を欠かさないSU-METALの前で「なんで?」と目を疑った。これがBABYMETALのゲストが流す映像なのだろうか?と困惑を覚えた。この件は凄く気になったので直ぐに調べた。歌詞を読み、アーティストのポリシーを調べることで頭の中のモヤモヤが少しずつ晴れていった。あんな楽しいバンドなのに、あんなに礼儀正しいのに、考えなしにあの映像は流さないだろう。この曲は特別ではなかった。この曲に限らず、サバトンは各国の戦争を題材とした曲で世界に挑む。このリアリティは日本だけではなく他の国でも少なからず同じような誤解に苛まれながらも、敢えて流しているのだろう。それこそが戦争を牽制する最も有効な手段なのだから。数々の困難を乗り越えて、ここまで勝ち上がって来たのだから、彼らの忍耐力には頭が下がる。ライブで感じられたコミカル且つ人なつこいパフォーマンスは本当の彼らなんだとも感じた。軍服を着て、戦車に乗ったりするけれど、平和を共に守ろう!と言う大義が、その歌から感じられる。BABYMETALのゲストとして、素直に相応しいと思えた。

 

8曲目は日本の西南戦争を歌ったShiroyamaだ。無謀な戦いに挑む最後のサムライを題材に歌う。新しいものを受け入れることを拒んだサムライの悲哀を教訓として歌っている。

 

ヨアキム「さあ、皆んなに良いニュースと悪いニュースを伝えなければならない、悪いニュースは次の曲が僕らの最後の歌だと言うこと。そして良いニュースは、次にBABYMETALが登場するっていうことだ。」

 

笛の音が心地よい名曲、To Hell And Backが演奏されてBABYMETALに繋いだ。困惑が深まるライブが実はこの後も続くとはこの時は思いもよらなかった。今はただ楽しくサバトンと歌い、ジャンプをして喜びを噛み締めたい。

 

SABATON Setlist

 

01. Ghost Division

02. Winged Hussers    

03. Swedish Pagans

04. The Last Stand 

05. Carolus Rex

06. Night Witches

07.  Primo Victoria

08. Shiroyama

09. To Hell And Back

 

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03.BABYMETAL登場!・・。

 

ダークサイドを告げる映像の後に黒装束のCHOSEN7が現れた。横一列に並ぶ7人、全身が布で覆われている為、誰が誰だかわからない。真ん中の1人が前に出てきた、あれがSU-METALなのだろう。失望の暗闇に包まれてIn the Name ofが始まる。広島で見たあの振り付け。・・だけれどとうとう顔すらも見えなくなった・・これがBABYMETALなのか・・どうしたものだろうか・・。KAWAIIを世界に流布するBABYMETALが回を重ねる毎にその可愛いを少なくしてきた。そしてとうとう何も見えなくなった。ただそこには黒装束のダンサーがいるだけ。続く新曲Distortionでは流石に覆いは取れたものの、7人は同じ衣装を纏い、顔には独特の化粧をほどこしている。誰が誰なのかが一見わかりにくい。僕のいるこの場所で見誤るのだから、もう他の人達は大写しのスクリーンを見るしかない。特に我らがMOAMETALが他の五人と混ざり合い、一体何処にいるのかがわからない。見当たらない。僕らからしたら「MOAMETALを探せ!」をライブ中にずっとやっている感じだ。終始MOAMETAL探しに明け暮れて、頭に何も残らない。ギミチョコ‼︎では三人にスポットが当たる。しかし喜ぶのもつかの間、新曲のElevator Girlではまた7人が入り混じる。そんな状況でどうしても曲に集中できない。いつものBABYMETALなら当たり前の3人が決まったフォーメーションで踊るから、曲に集中できる。いつも感じられた高揚感が今日はなかった。まるで僕の魂が幽体離脱でもして上がらない自分を上空から眺めているかのような滑稽さがある。YUIMETALがいなくなるとこんなことになるのか。首をかしげる。なんなんだ。どうしたのだろう?ライブ中にこんな馬鹿なことを考えるなんて。

GJ!はど真ん中にMOAMETALが居たにも関わらずまるで乗れなかった。それまでの失望に疲れてしまっていた。何時も聴くときは感動しかないアカツキ、楽しみにしていたStarlightがレーザー光線の過剰な演出に辟易して反感しか感じられなかった。このままライブが終わって居たら、もう僕は・・。

 

メギツネは初期の曲であり、三人のフォーメーションとなりMOAMETALにもスポットが当たる。大分目が慣れたことと、MOAのいつもの笑顔がではじめたので、高揚感があった。KARATE7人が倒れて勝手に起き上がるシーンには幻滅しはしたものの、RORでは二人に感動した。単純に素晴らしかった。それは安直ではあるが、暫くなかったこの掛け声が復活したからでもあった。

 

We are BABYMETAL!

We are BABYMETAL!

Weeee aaare! BABYMETAL!

 

たったこれだけだが泣けた。涙は流さなかったがSUMOAも泣いていた。何処の誰よりも辛い二人。引き上げる時にSUに話しかけるMOA。ずるい、これじゃあ嫌いになれない。やっぱり好きなもんは好きなんだよなぁ。YUIMETALが脱退して、今回の違和感ありありのダークサイドの演出がはじまって、どうしても好きになれなかったし、CHOSEN7の意味もよくわからなかった。発表された楽曲は悪くはなかったが、ライブはやたらと脚色が強くて、一体何を見ているのかわからない。見る対象も曖昧であるなら、もう見る意味もないのではないか?一層の事嫌いになりたい、なって他界すれば気が楽になるのではないかとも思った。それが自然であり、それが今までの僕の音楽との接し方だったわけだから・・。

 

ただ、BABYMETALというバンドは他のバンドとはちょっと違う気がした。それは世界という大舞台に立ち、初めて一線を超えた日本のバンドとして圧倒されたわけだし、応援したいと思ったわけだし、その歩みはまだ現在進行形なのだから・・。初期衝動は海外のフェスで本気で乗りまくる観客がいたこと、リップサービスではなくベビメタに熱狂するファンが沢山いること。音楽は世界共通言語であると高らかに公言できる誇り高きバンドであり、他に類を見ない。そんなベビメタの挑戦が続く限り僕らは応援するしか選択肢は無かったはずではないのか?不満と失望とに押しつぶされそうになりながら、The Oneを聴いて、そう自問自答した。

 

BABYMETAL Setlist

 

01. In The Name Of 

02. Distortion 

03. ギミチョコ!! 

04. Elevator Girl 

05. GJ! 

06. 紅月-アカツキ

07. Starlight 

08. メギツネ 

09. KARATE 

10. Road of Resistance 

11. THE ONE-English ver.

 

注1.アイアンメイデンのRun to Hillsだったようです。ヒロシ@AN4620さんから教えてもらいました。

注2.The Last Standと記載していましたが、確かにSwedish Pagansでした。せっかく教えていただきましたので直しておきました。