Babymetal Legend S-洗礼の儀-あなたがここにいて欲しかった

 

f:id:tak4ree:20180330232925j:image広島グリーンアリーナ
2017年12月2日

素晴らしいセット、素晴らしいシチュエーション、素晴らしきファン、そして素晴らしきパフォーマンス。それなのになぜ、これほどまでに苦しく、悲しく、心が締め付けられるのか。
何故なら、この公演にはあの人がいなかったから。YUIMETALが不在だったから・・。

そのニュースは広島グリーンアリーナに入場する直前のメールで知らされた。YUIMETALの不在通知に僕らはひどく動揺した。12月の冷え込む寒空の下で、クロークに上着を預けて、Tシャツ一枚となったが、それすらもYUIMETALのショックを超えるものではなかった。昼に配布された三種の神器をまとい、SU-METAL聖誕祭を心待ちにする僕らの笑顔は一様に不安へと変わる。特にYUIMETALファンにとっては観る前からその対象を失ってしまったのだ。MOAMETAL贔屓の僕としてもBlack Babymetalどうするのか?BMDは?これまで順調にステップアップしてきたBABYMETALに、初めて訪れた衝撃だった。

 

そんな動揺を隠せぬまま僕らは入場する。迎えてくれた会場には見たこともないような物凄いセットが置かれてあった。この見渡す限りの巨大なFOX HEAD。やり過ぎじゃないのか?メインステージはまるでどこかの聖堂にでも入ったかの面持ちで、会場は花道で二分されていた。その花道の上を先の巨大な六つのFOX HEADが可動ステージとなり、暗闇に沈黙している。「こんな大道具見たことない!」入場早々、実に圧倒された。

僕のいたのは一階上手のメインステージからみて一番後ろのモッシュッシュピットだ。始まるまでは、ほとんど観ることはできない距離感で、暴れとくしかないかなと思っていたが、実は花道がステージにもなっていたので、近くでも見られて良かった。とくにスタートからキツネ達に牽引れて移動するSU-METALのステージは、僕らのいる場所からスタートして聖堂のメインステージへと移動した。そう、新曲スタート。バイキング、森メタル系の勇壮な行進曲(In the nane of…)、そこから「IDZ」に繋がる。SU-METALはまるでフォースを身につけたジェダイの騎士のごとく、怪しげなマントに身を包み、僕らにXXの魔法陣の付いた杖をゆっくりと向けて横に一文字を切り、火の玉を放つ。その壮大な演出に僕らは全てを忘れて興奮、揉みくちゃになりながら、狂った様にサークルモッシュで遊ぶ。続いて披露された「ギミチョコ」では、ピットの狂乱の様は加速して、圧縮はなおのこと強まる。そして「アカツキ」の伴奏につながる。

今日はSU-METALの洗礼の儀だから僕は「アカツキ」を聴きにきたのだ。「アカツキ」はいつになってもSU-METALのナンバー1だと想っている。聴きながら、走りながら、僕らは涙した。そんな高まる想いの余韻に浸る余裕もなく、会場には戦慄が走る。「GJ!」だ。YUIMETALがいないからセトリからは外されるだろうと思われたBLACK BABYMETALの曲だ!ステージには我らがMOAMETALただ1人が立っている。曲はYUIMETALと交互に歌うが故に、YUIMETALパートは無音。「む、む、む、無音!」その状況に気づいた僕らメイトはYUIMETALパートを歌う。その声は大合唱となる。MOAMETALの2人分踊るんだと言う全力が、観客全員のハートを鷲掴みする。いつも笑顔を絶やさないMOAMETALが笑みを忘れ真剣そのもの。YUIMETALの為にも、このショーは自分が成功させる、SU-METALの洗礼の儀を成功させる、ただただその一心のMOAMETALの刹那が僕らに伝搬する。それは4の歌で最大の一体感となって会場を揺らす。YUIMETALは不在だったけれど、確かにあの場所に居た!MOAMETALと僕ら全員の心の中にいる。YUIMETALがそこにいたんだ!


20の夜と歌われた「ヘドバンギャー!」を終えて、ひとしきりショーが一段落する。いよいよ「洗礼の儀」が執り行われる。ステージは燃え盛る炎に包まれ、XXの巨大な魔法陣に貼り付けられたSU-METALはキツネらに連れられてステージ中央に安置される。洗礼となる炎を受けて、新たな魂が宿りて、叫び声をあげる。生まれ変わったSU-METALが新たなショーをスタートさせる。「BABYMETAL DEATH」だ!こんなデスは無い。YUIMETALが不在でやるデスなんか思いもよらない。しかしそれがまさかまさかで目の前で歌われる。SU-METAL、MOAMETAL、そして僕らが叫ぶYUIMETALのパートが聖なるトライアングルを作り、会場一体となるBMDを歌う。ベビーメタルはやはりデススタートが良い。感動した。それでもやはり、YUIMETAL、あなたにはここにいてほしかった。頭の中にピンクフロイドの「Wish You were Here」が鳴り響く。そして再び闇に包まれた会場に2人の天使が舞い降りる。黄金の衣装を纏いしSU-METALとMOAMETALが、花道を歩く。花道の中央で出会った2人は「The One」の歌に合わせて天に昇る。六つのFOX HEADのステージがあたかも第六章に終止符を打つかのごとく高く舞い上がり、下界の僕らは星空を包まれる。その瞬間に僕らの纏う三種の神器が閃光を放ちはじめて、会場は壮大な光に包みこまれた。
ショーとしては、やはりなんと言っても最高のものであり、異次元な強度を持つものだった。YUIMETALにあの黄金の衣装を纏って欲しかった。ショーが素晴らしければ素晴らしいほどに、胸が締め付けられる。それが僕のLEGEND-S。